(総会報告)
テーマ 平成19年度第2回居宅介護支援事業者研修会「事例発表会」
日時 平成19年9月27日(木)10:15〜16:15
場所 アステールプラザ「中ホール」
参加 300名
講演 『介護予防ケアマネジメントとストレングスモデル−いかに意欲を引き出すか−』
講演講師 大阪市立大学大学院生活科学研究科教授・日本ケアマネジメント学会理事
白澤 政和 先生
事例発表 広島市内8区から各区1事例 発表
総評 白澤 政和 先生

■講演
<ポイント>
改正により介護支援専門員のモチベーションが下がっているのではと思う。
多くの介護支援専門員は利用者に寄り添うというより、制度の管理的な役割を担わされていると感じている。
介護保険改正後の問題点として、介護保険サービス利用者を3種類に分けたことによりワンストップサービスが崩れた(居宅介護支援事業所にてすべての調整・サービス利用ができていたが、要支援・特定高齢者など窓口が異なることとなった)。
生活の継続的支援が壊れた(ケアマネの交替やサービス内容の変更など)。
重度者対応より予防に焦点を当てすぎており、財政抑制(遅延はできても)につながらないと感じている。
意欲を引き出すことや強さの活用はケアマネにも必要。

 ケアマネの基本テキスト等にあるケアマネジメント手法(ブローカーモデル)にストレングスモデル(利用者の意欲・能力・自信・嗜好)にも焦点を当てて、ケアマネジメントを行うことで、生活の質の向上につながることを事例や図(嗜好・意欲・能力・環境)を交えて説明いただきました。また、ストレングスモデルはICFの考え方と近い(共通する)考え方であり、介護予防ケアマネジメント(様式)での活用(記入)方法についてと、現状の様式の問題点も含めて解説いただきました。一方、介護予防ケアマネジメントにストレングスモデルを導入するには、時間が掛かる点(訪問頻度)などがあり、相当難しいことや、直接サービスを提供している事業者からの情報(嗜好・意欲・能力)を取り入れることが有用であるとのことでした。また、認知症の方へのストレングスモデル展開の紹介もされ、ストレングスモデルを活用することで介護保険法の理念である高齢者への尊厳が現実化するとのお話でした。

■事例発表(座長:坂井幹事・山下幹事)
<中区> 独自の価値観を持つ方を支援して
<東区> 閉じこもりが強く、他者の受け入れができない利用者と関わって
<南区> キーパーソンに精神障害がある利用者への支援
<西区> 夫の死により字の読み書きができない妻の問題行動が表出した事例
<安佐南区> 短期入所サービス導入時における考察
<安佐北区> 多職種協働で支援している事例
<安芸区> 社会資源を活用して一人暮らしを送っている事例
<佐伯区> 利用者の「意欲」に注目したプラン作り

■総評
 全体を通じて3点の評がありました。
 まず一点は、個人のケアマネジメントと地域のケアマネジメントの連携が必要である。ソーシャルアクション的な機能が都市部においては重要で、地域包括支援センターに期待したいとのことでした。
 二点目は、困難事例は、意見が表出できない場合や社会規範とは離れている場合、社会資源が無い場合や経済的事由による場合、社会資源との関係がうまく取れない場合があり、それらが複合的でありどこから手をつければいいか分らないことがある。これらは要介護度とは関係性があまり無く、今後ケアマネ業務や報酬との関係で整理を要するとのことでした。
 三点目は、居宅サービス計画と個別援助計画の関係性を2ウエイにすることが大切。ケアマネージャーとサービス提供事業者が対等な関係を作り上げ、サービス提供事業者からの情報を居宅サービス計画に反映することが有効であるとのことでした。
 総じて、すべてのケースが意欲を引き出せてうまくいくことは考えられない。意欲のない人はダメではなく、そういう生き方もある。ただ、ケアマネの努力は必要。今回の発表事例は、1事例は途上であるが7事例はうまくいっているとの感想をいただきました。
(研修会アンケートまとめ)
平成19年度第2回居宅介護支援事業者研修会「事例発表会」
講師 白澤政和
平成19年9月27日/アステールプラザ「中ホール」/参加者 300人
問1 本日の講演はいかがでしたか。
1 大変よかった 95人(61%) 2 よかった 56人(36%) 3 ふつう 5人(3%)
4 あまりよくなかった 0人(0%)   5 よくなかった 0人(0%)    
問2 本日の事例発表はいかがでしたか。
1 大変よかった 51人(33%) 2 よかった 84人(55%) 3 ふつう 18人(12%)
4 あまりよくなかった 1人(0%)   5 よくなかった 0人(0%)    
講演について
単なる理論ではなく、具体性があり分かりやすかったです。
講師の先生が、ケアマネジャーが疑問に思いながら仕事をしていることを理解してくださっており、まだ将来に希望を持って仕事を続けられるかなと感じました。
すごく良かったです。
自分の日頃思っていたことを理論づけてお話くださり、大いに納得でき、仕事に前向きに取り組もうと思えた。
ケアマネジャーの悩みを理解してくださっていることを感じました。
介護保険の方向や今後のあり方がよくわかりました。本日勉強したことを頭に入れながら、仕事に生かしていきたいと思います。
ストレングスケアマネジメントについて、一歩踏み込めたと思いました。利用者を取り巻く状況をよく把握していきたいと思います。
わかりやすかった。今の介護保険への疑問を言葉にしていただけた。
今の業務に参考になります。
予防プランについて常々必要ないのではと思っていた。計画表を埋めるのに苦労していたが、したいこと、好きなことを聞き出し、目標を設定しQOLを高められるよう援助できればと思った。ゆっくり、わかりやすく説明していただいたので良かった。
強みを見つけて、それを伸ばすプラン作りに、私の今までのプランに反省点を見つけました。支援をどうしていけばよいかと考えていた事例に当てはめてみると、私自身の問題点と答えが少しずつ見つかりました。
予防プランも介護プランも考え方は同じで、いかに本人の意欲や能力を引き出していき、QOLを高めていくかということが重要であるということがよくわかりました。
意欲をいかに引き出すか、皆苦労されているのがわかり、今後も頑張っていきたいと思えました。
予防プラン用紙の変更があれば賛成したい。
話の内容がわかりやすかった。先生の考えられた予防サービス計画表を早く使用したい。現在のは使用しづらいし見にくい。枚数を増やしてもいいので、もう少し字を大きくして欲しい。
ストレングスモデルを念頭に置き、日々の業務を遂行したい。
もっと先生の話が聞きたかったので、もう少し講演時間が長くてもよい。勉強になりました。
実際に生かしていきたいと思いました。
ストレングスモデルの内容はとても興味深く、ためになった。現在関わっている利用者(精神疾患あり)の対応にとても役立つと思います。
最後の言葉がとてもよかった。
予防計画表に対して、介護予防が始まってから非常に矛盾を感じていたが、白澤先生の話を聞き、今後の動きに期待をもった。情報交換、連携も重要と改めて認識した。
日頃感じていることを、先生が整理して話していただき、何かすっきりした気分です。意欲的になれない利用者へもその背景にある気持ちを大切にしながら支援を続けていきます。
高名な先生でありながら、現場のケアマネジャーの悩み、苦労をしっかり把握していただいたコメントが多く、大変癒されました。先生のアドバイスを参考に取り組んでいきたい。
ケアマネジャー業務に参考になるお話を具体的にされ、考えさせられることが多くありました。
白澤先生の話を聞いて、今まで気づいていなかったことを知ることができた。ストレングスの重要性がわかった。
日々アセスメント、プラン作成業務を行う上で、これでよいのか疑問を感じています。講演で聞いたような関わりができていなかったと思います。今日の研修をきっかけに自分のマネジメント・視点を再度見直し、生かしていきたい。
マネジメントする上でのヒントをたくさんいただきました。
今までは意欲がない人というのは、ケアマネジャーの聞き方が悪い、ケアマネジャー次第という講演が多かったが、今日は意欲のない人もいる、そういう人も認めて努力することと言われて、少し気が楽になりました。
ストレングスモデルについて、これまでの研修ではあまり分からなかったが、今日は丁寧な説明でよく分かった。
ストレングスモデルについて、今後のプラン作りに大変参考になる講演でした。いかにストレングスを利用者から引き出す雰囲気を作ることが大切か痛感しました。
先生のお話しはわかりやすく、ケアマネジャーが普段抱えている想いを理解し、代弁してくださっていた。今後の仕事をしていく上で、大変役に立つ講演だった。
ケアマネジメントに対する意識が変わりました。
ストレングスの考え方がとてもよくわかり、利用者様への関わりを、改めて考えていきたいと思いました。
言葉で聞いてもイメージしにくかったストレングスモデルが、だいぶ具体的に考えられるようになりました。
予防介護計画を作るたびに、なんでこんなにややこしく書くのかと思っていました。もっと現場にあったのができそうで嬉しく思いました。予防の人モニタリング3ヶ月はおかしいと思います。
私たち、現場の思いを十分に理解していただいていることを感じられて嬉しかったです。いつも、予防プランには悩んでおりましたが、先生の言葉で気分的に楽になりました。
多くのことを学びました。失敗してもいいんです、という言葉に救われました。
ケアプランを立てる中で迷いがあった部分が、講演を受けてすっきりした。自分の中での方向性が見えたと思うので良かった。
本人の生き方を尊重していくことの大切さを感じ、とても参考になった。
視点を変えて見ることの必要性を痛感しました。ご利用者より、ご家族のレスバイトに重点を置いたプランニングになっていることは反省させられました。
白澤先生のお話しはわかりやすかったです。頭の中の整理ができました。先生がおっしゃっていることが、今後の介護保険に反映されますように。
先の見えない仕事だと最近やる気をなくしていましたが、もう1度原点に戻り継続してみようと思うことができて良かったです。
ケアマネジャーにとって、元気の出る内容で楽しく勉強になりました。
事例の総評が具体的でわかりやすかった。
日々感じている制度への不満や疑問。先生が話され、理解していただいていると感じた。これからも、行政等に微力ながら疑問点等ぶつけ、声を出し続けたいと思いました。
白澤先生の話で救われる思いを感じました。しかし、現実は要支援者への線引きや壁があることで、業務の手間が増えたり、利用者への混乱もまねいていると思います。早く包括をやめてほしいと思いました。
介護予防のサービス計画書の書式は非常に作成が大変です。要支援の方でも訪問は必要です。介護の方と同様に毎月訪問し、1時間位時間を取るようにしています。少しお元気な分、本人、家族との間に問題もあり大変です。差はつけられません。
事例発表について
皆さまの困難事例支援等の発表を聞き、とても素晴らしいと思いました。
対応が参考になります。困難事例に取り組んでおられることがわかり、私自身の励みにもなりました。
身近にこんな大変なケースがあるのかと驚いた。悩みはつきないと感じた。
みなさん大変なケースを上手にまとめておられました。困難な事例がこんなに普通にあること。ケアマネジャーの責任がどんなに重いかをつくづく実感しました。介護保険だけではまかないきれないこと、複雑なことが増えました。もっと色んなサービスが使えるようになってほしいと思います。サービスが入ると家族や地域の鉄道が引いてしまわないよう、地域全体で支えていきたいですね。
様々な困難事例に良く対応されており、自分にはこうした対応ができるだろうかと反省させられた。
チェックシートを作成したり、資源を有効的に活用して支援されている様子に、私も活用させていただこうと参考になりました。
現場の声や内容だったので、とても参考になりました。この事例を参考に仕事に役立てていきたい。
ケアマネジャーのけなげさを感じました。
総評を含めて、事例発表がとても勉強になりました。
発表者の皆さまはそれぞれ大変な事例を抱え、日々奮闘されている様子がうかがえ、私も困難なケースを持っていますが、参考にしていきたいと思います。
皆さま困難事例にしっかりと取り組まれていて感動した。意欲、能力の引出しを上手にされて、とても参考になりました。
利用者、家族へのアプローチの仕方等、参考になる点が多くあった。
皆さま大変な処遇困難ケースの発表で、こういった関わりがあったのかと大変勉強になりました。関わるケースにより、人生が変わって行くことがあるので、発表を通じて業務の見直しの良いきっかけになりました。
個々のレベルの高さを感じました。
白澤先生の総評を伺い、より理解できた。全ての事例がうまく行くとは限らない。色々人が支えあっていく社会を作り上げていきたい。
とても参考になります。ケアマネジャーが持っているケースは、1人として同じでないので、これでいいのかとたえず不安におちいっています。
聞きづらい事例が少なく、内容もとても充実していました。
どの事例も複雑なケースなのに、よくまとめられたと思います。また総評がしっかりしていて、ストレングスモデルの理解につながりました。
午前の白澤先生の講演とリンクしていて、深く考察できる事例だった。地域包括支援センターの職員として、ケアマネジャーの方が抱えている事例を知るよい機会でした。
皆さん、色々大変な思いをされており、自分も頑張らないと、と思いました。
他のケアマネジャーさんが、難しい事例に対して真剣に取り組んでおられるのがわかって、心強く感じました。
それぞれのケースが自分が持っているケースとよく似ており、参考になったことと、ああ、みんな同じ悩みを抱えながら仕事をしているのだと思いました。
発表者の日頃の頑張りが見えました。参考になりました。
発表者も準備がよくできていました。
発表者の皆さまが色々な視点から、思い、考えながら利用者さんに関わっておられ素晴らしいと思った。自分自身の今の利用者さんとの関わりを見直したいと思う。
職種により視点の違いがあり、とても考えるところがあった。
どの事例もケアマネジャーの守備範囲を超えた努力のたまもので、素直に頷けない。介護保険や介護の本質を国の中枢で真剣に考えてほしい。
その他意見・参加してみたい研修テーマ
ケアプラン作成、アセスメント、担当者会議
今日の困難事例は参考になりました。
介護保険について、ユニークな方というか、良い点、悪い点を面白く話してくれる先生の話を聞いてみたい。
是非今後も白澤先生の講演をお願いしたい。
ストレングスモデルを活用したケアマネジメントをまたやってほしい。
ケアマネジャーとして知っていなくては利用者様が損をする制度についての研修があれば有難いです。
介護保険に関連する各制度やサービスの活用法について知りたいです。
困難事例を支援した経過
利用者本人より、介護する方に問題のあるケースも多いです。介護者がうつだったり。精神疾患の方への関わり方を学んだり、色々な人を巻き込んでの連携等が必要ではないかと思っています。
精神障害者との関わりが多くなってきています。詳しく教えていただきたい。
効果的な事例検討の方法
認知症
認知症高齢者に対するケアマネジメントの事例や対応
高齢者虐待について
認知症ケア研修で「センター方式」の研修を受けたい。
医療がらみや主治医との連携の難しさを日々感じているので、主治医との連携について研修希望
広島には他県にない原爆助成制度がありますが、研修のテーマに考慮していただきたい。
制度の改正が度々あることから、ケアマネジャー業務の内容について。
種類作成の複雑さがもっと軽くなれば、利用者さんとの関わりが深く持てると思います。
今回のように事例発表と講義が連動していると、とてもよく理解できました。次々に新しいケアマネジメントの理論が出てくるので、頻回にこういう機会があればと思います。
介護保険制度が今後どのような方向に向かって行くのか、とても不安を感じます。
介護予防プランに対するポイントについて。(プランの立て方についての研修はあるが、評価までを行う研修がない。)地域包括支援センターが違うと、プランに対する指摘事項、視点が変わり、戸惑うことが多いです。
介護保険制度に関すること。
ケアプラン作成時の留意点について
意欲を引き出すための面談、接遇の技術の演習
権利擁護
地域、医療との連携ができるような方法
制度の細かな変化の説明会がありませんか。新人の講習会にも参加できたら。
困難事例(高齢者虐待、在宅ターミナルなど)と思われる事例についての支援、どう関わったらいいか、方法、考え方を教えてほしい。
現在のケアマネジャーの業務の中で支援するにあたり、矛盾していることや納得のいかない法制度について、意見をとりまとめるような場があるといいと思います。
介護予防でも要介護でも、3ヶ月に1回や月に1回の利用者宅訪問だけでは、その方の意欲や何が必要かを見出すことは難しいと思った。