(総会報告)
テーマ 居宅介護支援事業者研修会 平成20年度事例発表会
日時 平成20年9月10日(水)10:00〜16:00
場所 広島国際会議場「コスモス」
参加 300名
講演 「一人ひとりの尊厳を支えるケアとは」
講演講師 立正大学社会福祉学部教授 國光登志子 先生
事例発表 広島市内8区から各区1事例 発表
総評 國光登志子 先生

■講演
<ポイント>
介護保険制度は尊厳を大事にする制度であるが、ひとりひとりの事例をみるとそういったことがなかなかうかがえないなと感じていたので、尊厳に注目したいと考えていた。
契約においてサービスをする制度になったとしても、社会福祉法第3条(福祉サービスの基本的理念)は原点である。
「あなたの尊厳とは?」と尋ねられても答えにくいものであるが、「大事にしてほしいと思うもの」「らしさ」といえば理解できるのではないか。
プランのひとつの切り口は様式行為で、利用者の生活のにおいのしないものもある。しかし、尊厳に近い概念で、具体化させることができる「その人らしさ」に注目することが大切。いままでのケアマネジメント、ケアプランでは「その人らしさ」に注目していただろうか。
支援経過記録は重要で、支援の途中経過、苦心している部分の断片を書き留めておくことが必要であり、そのことによりアプローチの仕方を変えることにつながるのである。
アセスメントも、「生活歴」「家族関係」「性格」「趣味」「人づきあい・近所つきあい」の情報収集は苦手で入り込めない場合が多いが、一定の人間関係に早く気付くことにより入り込むタイミングが見つかる。プライバシーに関することを避けて通って、尊厳の保持はできない。「その人らしさ」はこういった情報の中からうかがい知ることが出来るものである。
その人らしさとはパーソンフッドである。
その人らしさが現れている良い状態をとらえるときの指標は、(1)くつろいでいること (2)自分らしさ (3)こだわり・愛着・むすびつき (4)自ら携わる (5)社会とのかかわり の5つである。これらをキャッチすることにより、「その人らしさ」につながるのである。

 ケアプラン、支援経過などはノルマを立証するための使われ方でなく、また、サービスをただ貼り付けるだけのプランではなく、プライバシーにかかわることを避けてとおるのでなく、そういう情報も収集し「その人らしさ」に注目したプランをたてることの大切さを改めて考えることができました。

■事例発表
<佐伯区> 障害の受容が難しく閉じこもりがちとなっている利用者との関わり
<中区> 経済的問題があり術後廃用症候群となるが在宅生活を希望する事例
<東区> 在宅での療養支援体制構築の取り組み
<南区> ケアプランへのストレングスモデル適用の試み
<西区> 認知症とそれを支える家族と関わって 〜生き生きとした時間のために〜
<安佐南区> がん末期を未告知の第2号被保険者の支援について介護支援専門員の思い
<安佐北区> 残された時を最後まで家で…生活支援が母と娘の思いを叶えた事例
     〜家族アセスメントを通して〜
<安芸区> 自由奔放に生活している利用者を支援し、「自分らしく生きる」とは何かを改めて考えた事例

■総評
それぞれの事例に『ターニングポイント』というものがあり、それをきっかけにサービスが拡大されたりするものである。
サービスを提供するとき負担感を与える介護になっているかもしれない。利用者の言葉はうまく断る方便かもしれない。本音を聞けるようになったらプロである。
ケアマネジャーが『浪費』と思っても本人はそう思っていないかもしれない。その人の価値観を大切にすること。本人の力強い意見は尊重するべきである。本人の訴えは何よりも力強いものである。
本人から具体的な目標が出てくることがとても大切である。当事者参加こそストレングスである。
利用者が亡くなった後の担当者会議はぜひやってほしい。チームケアのどこがよかったのか、他に選択肢があったのかを考え、振り返る機会に恵まれるということは大切なことである。
他人にリードされることが嫌な人に対して、デイサービスでお客様にしてしまうことがサービスの拒否につながったのではないか。デイサービスにおいてリーダーシップを取る場面があるのか、お客様の立場にたつことの辛さも理解しなければならない。
ターミナルの難しい事例について、難しくなったときに一緒に考えたり、フォローがないとなかなか進まないものである。
本人の気持ちに向き合ってみることが大切である。
価値観の違う人へのアプローチの難しさがある。
一つ一つの事例について上記のような具体的な総評をいただきました。
(研修会アンケートまとめ)
回答数189人
本日の講演、総評はいかがでしたか。
大変よかった 73人(38%) よかった 97人(51%) ふつう 17人(9%)
あまりよくなかった 1人(1%)   無記入 1人(1%)    
本日の講演についての意見、総評
<講演について>
短い時間でしたが、わかりやすく尊厳を支えるケアの話を聞き、現在、そのケアが欠けていたことに気づき、今後の自分のケアにつなげていきたい。
利用者本人の尊厳と、その人らしさを大事にして支援していくことが大事であることのポイントを教えて頂き、ケアマネとしての指針を改めて認識することにつながったと思います。
尊厳については、難しいことを具体的に解説して頂き、介護支援専門員として改めて人の人生に関わる責任の重さを痛感した。
尊厳一言で解決できるものでなく、個々の尊厳の違いは難しく、短時間では理解できませんでした。
命の尊厳という抽象的で壮大なテーマを基にしたもので、現実のケアマネ業務とはかい離しているし、もう少し現実に即しての話ならわかりやすかったが…。
その人らしさに視点をおくことの大切さを改めて感じた。
その人らしいプランというのは、何となく思っていても、明確には分らない部分だったので、この度の講演で少し理解が深まったように思う。
基本的な考え方のはずなのに日々の業務の中に流されたり、個人的な感情なのかと悩むこともありましたが、その人らしさを一緒に考えていくことは必要な事だと再認識させて頂きました。
「尊重」、本人に重点を置くべきとはわかっているが、家族との同居の継続を考えると、家族の考えを提案せざるを得ない。
原点に帰り自立支援に向けてアセスメントをしていきたい。相手の立場を考えてプランをたてていた再考させられました。
重いテーマで、日頃の自分のスタンスの反省と学生気分で内容の濃いお話を聞かせていただきました。
自分の担当しているケースの振りかえりになって初心を思い起こされました。
初めて先生のお話を聞かせてもらい、沢山のことに気づかされた。今後の関わりに生かしていきたいと思います。
<総評について>
とても勉強になりわかりやすかったです。
勉強をし、もう一度お話が聞けたらと思います。著書を読ませていただきます。
話もよく分かり、冗談も交え、素晴らしい講義でした。長い時間退屈せずに聞けました。
ケアマネの実践業務にすぐに役立つ、事例検討会の手順はとてもよかったので、実践したいと思う。わかりやすい言葉ではっきりと明快な口調で講演され、聴きやすかった。
國光先生の講演は、わかりやすくとてもよかった。事例の講評も、ターニングポイントを中心に、具体的で参考になった。
内容は、とても興味深かったが、やはり環境ですね。時間をもう少しかけて、お話を聞きたかったです。研究等にとても興味があるので、日本でもトップの教授にお話頂け、感激です。
本日の事例発表会はいかがでしたか。
大変よかった 91人(48%) よかった 86人(45%) ふつう 9人(5%)
無記入 3人(2%)        
意見
色々な事例があり、とても参考になりました。
利用者さんのストレングスをひきだした事例や、思いはあるが、金銭面などの理由でサービスが十分に利用できない事例など、ケアマネをしていれば、一度は、経験する事例なので、共感しながら興味深く発表が聞けました。
拒否されても関係作りが難しい人でも諦めてはいけないと思いました。
発表された皆さんが、本当にしっかりとこだわりを持って、関わっているなと自分の業務を見直すいいきっかけになりました。やはり、ケアマネ十人十色で様々な視点があることに気づかされました。
利用者との真剣な取り組みをそれぞれがされており、感動に近いものを感じました。
皆、ケアマネという仕事に誇りを持って、人の心に添おうとしているのがすばらしい。
日頃、自分一人で悩んでいることが多く、同じ立場の人達の悩みや努力、成功例が聞けてよかった。
介護保険が始まって8年、ケアマネも個々に目を向けた具体的なプラン作成関わりを持つように努力されていると感じた。年々レベルが高くなっていると思う。
後半の発表はケアマネの取り組み姿勢について考えさせられた。利用者様との向き合い方、話の持っていき方の変更も参考にしたい。
今後、参加してみたいと思われる研修のテーマ等
パーソンセンタードケア
困難事例(解決しない事例)
認知症の人との関わり方
担当者会議の開き方、進め方。
成年後見制度
重度者の在宅介護。(特に独居者に対する支援に関して)
各区域の事業所のアピール、サービス内容等がわかる社会資源等がわかる研修
小規模でのグループ討議をし、検討、総評いただけるような研修。
主治医との連携について
アセスメントシートの紹介、勉強会
虐待に対する事例、ネグレクト事例
精神障害者の利用者、家族を支援していくための対応