(研修会報告)
第2回居宅介護支援事業者研修会「認知症研修会」
日時 平成24年3月21日(水)14:00〜16:10
場所 アステールプラザ「中ホール」
参加者 200名
講演1 「認知症地域支援推進員の活動について」
     認知症地域支援推進委員 岡田眞理氏
講演2 「認知症疾患医療センターの活動と認知症診療について」
     広島市認知症疾患医療センター 医師 岩崎庸子氏


<公演趣旨>
(1)認知症地域支援推進員の活動について
   認知症地域支援推進委員 岡田 眞理氏

認知症の方への対応が、介護の力だけで支える事が困難になっている現状を踏まえ、医療と介護の連携強化と、地域における支援体制の構築を図る目的で活動が始まった。現在、広島市と大竹市、三原市に各1名配属されている。業務内容…(1)退院時、外来診療で認知症の疑いのある場合、在宅医療及び、介護サービス利用につなげる支援(2)若年性認知症の方の就労支援・障害福祉・介護サービス利用の支援及び個別相談の実施(3)区役所、地域包括支援センターからの、医療連携に関する処遇困難事例への後方支援や、認知症対応研修の協力、認知症ケア相談の実施。(4)認知症に関する医療・介護福祉及びインフォーマルサービスの情報を、地域における支援機関と共有する。物忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)や認知症サポート医に協力を仰ぎ、かかりつけ医からも相談できる体制をとり、支援の幅を広げていきたい。
医療と介護の連携強化を図るため、かかりつけ医の担当者会議への参加の促進、介護職の医療に関する学習会、サポートマップ作成、ケアマネ自主勉強会への参加の促進を予定している。連携強化のパイプ約としてさまざまなアクションを起こしていきたいので、どんどん声をかけて欲しい。

(2)認知症疾患医療センターの活動と認知症診療について
   広島市認知症疾患医療センター 医師 岩崎 庸子氏

センターのバックアップ施設として、草津病院は、認知症、精神科の救急医療、ストレス関連疾患中心の診療をコンセプトとしている。認知症患者数は年々増加しており、厚労省は認知症疾患医療センターを全国に150ヶ所設置する予定。当センターは地域包括支援センターと連携をとり、早期から一貫したマネジメントを目指している。認知症診療で大事なことは早期発見、早期受診により、家族が症状の認識をもち対応がしやすくなる。また、手術や薬物療法による治療等で周辺症状を軽減できる。妄想への対処としては投薬が非常に効果がある。認知症患者の家族の心理・・・『とまどい 否定』→『混乱 怒り 拒絶』→『あきらめ 割り切り』→『受容』というプロセスを行き来しながらたどる。また、かかりつけ医とケアマネ間の重症度判定の違いは顕著、調査結果では重度でも半数のみの一致。ケアマネからかかりつけ医との連携不足として『主治医の意見書に具体的な情報が少ない』、地域包括からは『診療・説明・助言の不十分さ』があげられた。かかりつけ医からは認知症受診の問題として『家族が切羽つまらないとこない』、治療上の問題点として『薬の効果がはっきりしない』、『治療より介護が重要、関わり方が難しい』という声が多い。医師の認知症に対する治療方針等の個別情報も必要と考える。認知症疾患医療センターへは、電話連絡→認知症スクリーニング検査(外来診療は紹介状が無くても可)。追加検査では、院外依頼も行なっている。困ったことがあったら、ぜひ当センターに連絡をして欲しい。
連携ツールとして3種類紹介。

<質疑応答>
Q1. 危険な行動に対する対応の仕方を教えて欲しい。
  (1) 工具で水道管を壊す、刃物で家具を解体する。
  (2) 物取られ妄想あり、興奮して一晩中騒ぎ家族を家から追い出す。
A1. 妄想は色々な人間関係もあり、不安等状況によって理解しやすい部分もある。対応によって変わる。
  (1) 説得や説明は効かない。入院しても難しく、薬物を使用するとADLが下がるので、まず、生活リズムを整え他の事に興味を持たせ様子を見ることが大事である。
  (2) 夜になって興奮するのは、昼の過ごし方、家族はどう関わっているのかを確認する。その上で、デイサービスの利用等生活パターンを変えることも考える。妄想は薬でコントロールが可能なので精神科に相談する方法もある。
Q2. 家族の理解と支援について聞きたい
A2. 家族が理解されない、したくない場合はそれなりの理由がある。ケアマネとして一緒に対策を考えていくという姿勢が大切。客観的なデータや検査結果等で受け入れられる場合もある。
Q3. 認知症症状緩和の薬の適合、不適合のポイントはどこか
A3. 認知症の薬として現在、進行を遅らせるものしかなく、根治するものは無い。また、進行を遅らせる薬も、早期から使用可能なものが数種類あるが、他に比べて圧倒的に効果があるというデータはない。使用については主治医の判断によるが、服薬時における制限により使用する薬を選択している。精神科の領域の薬なので副作用とのバランスを考慮して使用する必要がある。
(アンケートまとめ)
(回答数131人)
1.本日の研修会はいかがでしたか。
とても参考になった 70人(53%) 参考になった 60人(46%)
あまり参考にならなかった 1人(1%)   参考にならなかった 0人(0%)
2.研修会についての意見等(抜粋)
認知症について詳しく教えてもらってよかった。認知症疾患センターの役割、地域支援推進員の活動についてとても参考になりました。早期発見や病院受診の継続の大切さなど良く分かった。
認知症地域支援推進員の働きが漠然としかわかっていなかったので、とても良かったです。困った時に熱心に相談にのっていただけるということで、心強く思います。認知症疾患センターについて、精神科の方は重度の方しか相談しにくいと思っていましたが、本当に早く、軽いうちから相談させてもらっていのがわかり安心しました。
地域支援推進員さんの存在を初めて知りました。とても心強く思いました。何かあった時には、是非、相談したいと思います。
認知症地域支援推進員さんの活動が明確になりました。一人での活動は、大変と思いました。広島市認知症疾患医療センターの役割について理解できました。気軽に電話でアプローチできると分かり、利用しようと思いました。認知症の早期発見、早期治療の重要さが分かりました。
今後、認知症の家族の方に適切に説明することができると思い、研修に参加して良かった。
岩崎先生のお話、大変わかりやすく有難かったです。スムーズに受診につなげられるテクニックを身につけ、上手に対応しなければと痛感しました。
岩崎先生のお話はとても参考になりました。センターを実際に利用されている方もあります。医師からの助言は利用者の家族の柱になっているので、その部分を軸にして、より良い対応を探っています。
認知症に関する連携ツールに興味を持ち、使用してみたいと思います。
今まで認知症の方の対応で困っていた。これからは是非活用していきたい。
草津病院の相談員の方には、時々電話でご相談することもあり、いつも親身になって的確な助言をいただけるので助かります。
困った時の病院へのつなげ方が参考になりました。そして、支援推進員の活動も知り、相談できる窓口がひとつ増えて良かったです。
最近、認知症患者が増えているように思います。今後も認知症に関わる研修を受けたいと思います。
3.今後、参加してみたい研修のテーマ、その他ご意見
認知症の薬について
認知症についてもっと詳しく知りたい。
病気の知識
在宅医療、医師の考え方が聞きたい
成年後見人制度について具体的事例
生活保護、自立支援等の公費の制度について
苦情対応について。国保連、市、区、包括等への相談事例
家族の虐待(ネグレクト)に対するアプローチ
介護報酬改定に関する勉強会
介護者の抱える問題も多様化している。パターンと対応方法を集約したり、学んだりできる場があればと思います。
資料が多すぎて、ファイルに取り込むことのみとなっている。
介護報酬改定について、発表から実施に至る日数が少ない。PCのプログラム変更の時間等もっといただきたい。
広島市の高齢者施策を始めとした施策の概要を説明していただければ、私たちの業務の目指すところがどこに位置するものなのかが分かり、目標設定しやすいと思います。
医療との連携について。他の事業所はどのように行っているのか。医師はどう思っているのか。知りたいです。電話、手紙、FAXどれがいいのか。忙しくて医師が話を聞いてくれない。直接行くと窓口で長く待たされる。とても大変です。