(研修会報告)
第2回居宅介護支援事業者研修会
日時 平成29年3月30日(木)14:30〜16:30
場所 JMSアステールプラザ「中ホール」
参加者 205名
講演 ケアマネジメントにおけるスーパービジョン
− スーパービジョンの視点・機能とスーパービジョンに必要なアセスメント
講師 日本女子大学 人間社会学部 社会福祉学科 教授 渡部 律子 氏


(1)スーパービジョンとは?−ケアマネジャーとスーパービジョンをめぐる様々な疑問・課題
○ケアマネジャーのスーパービジョンをめぐる様々な疑問
何ができれば合格点なのか
スーパービジョンとは(なぜやらなければいけないのか、アプローチ方法、回数・時間・自分自身の関与度、運営法、ジレンマなど)
スーパービジョンの基礎をしっかりと身につけることが重要である(基準がないと正しいことをやっているのかがわからない)。
スーパービジョンは少しずつ力をつけることができる。ただし、急に力はつかない。
アセスメント作業と同様に、スーパーバイジーをよく観察して対応を考える必要がある(相手の力のアセスメントは、とても大切なことである)。
スーパービジョン後、実践して成果があがらなければ意味がない。実践してみてどうだったのか、成果を確かめることが重要である。

○スーパーバイジーとしての経験・バイザーとしての経験から学んだこと
バイザーが批判的だと真実を語りにくい。
バイザーが理由や背景を丁寧にたずねてくれると、より深い振り返りが可能である。
バイジーから得る情報は間接的、2次情報であり、根拠の確認が必要である。
具体例、逐語録などが必要である。

○私が学んだこと
スーパービジョンプロセスは援助プロセスと類似、同じ現象がおきる。
スーパーバイザーは実践で生かされてはじめて意味がある(次に生せ、使えるようにする)。
バイザーは単なる批評、コメントで終わらない。バイジーは感動、感激で終わらない。
バイジーも準備が必要である。
記録を書くことで、プロセスそのものを振り返り、省察効果がみられる。
バイザーの指導法にはバリエーションがある(これじゃないとだめといったものではない)。

(2)スーパービジョンの目的と効果・機能・留意点−具体例を通して理解
@(DVD)視聴
  事例1 もしあなたがスーパーバイザーだったら、新人相談員の電話での相談者の対応についてどのように考え、どのような言葉をかけますか。それなぜでしょうか。
  事例2 新人相談員があなたのところにやってきて事情を説明しました。事情を聞いて彼に対する考え方や今後の指導方針は変化しますか。
Aスーパービジョンの目的
  クライアントに質と量の両面で可能な最善の支援を提供すること
Bスーパービジョンの機能
 

表1:スーパービジョンの意義、3つの機能と目的・機能を最大限に発揮する方法


 

スーパービジョンの機能は、次の3つの機能に分けられる。

  @ 管理的機能(マネジャー:スーパーバイジーが組織内で適切な役割遂行ができるようにする)
  権威的にならず「力」の行使に躊躇しないことで機能を最大限発揮できる。
  組織のルール・実践方法を体系立てて明確に伝えることで機能を最大限発揮できる。
  A 教育的機能(教師:スーパーバイジーのゴール達成を可能にするように知識不足を補ってトレーニングをする)
  スーパーバイジーの成長に真摯な関心を示すことで機能を最大限発揮できる。
  専門性、対人援助の理論と実践に関する最新の知識を保持し提供できることで機能を最大限発揮できる。
  B 支持的機能(適応を促進するカウンセラー:クライアントに効果的なサービスを提供するため仕事に関連するストレス適応を助け不満を解消する)
  スーパーバイジーの評価すべき仕事に肯定と賞賛を与えられる事で機能を最大限発揮できる。
  逆転移や否定的なフィードバックにも防衛的にならず気持ちよく受け入れられることで機能を最大限発揮できる。

(3)スーパーバイザー/バイジーに必要な対人援助職の基盤(職業倫理・知識・スキル等)
図A 対人援助者に必要な基盤

 

対人援助者に必要な基盤には次の6つがあげられる

  1. 援助者としての基本的視点(役割認識、ゴール、価値、倫理)
  2. 信頼される関係を形成する力と自己覚知
  3. 総合的アセスメント力
  4. 相談援助面接力
  5. 制度、資源を知り調達できる力・交渉力
  6. 人間とその人を取り巻く環境との関係に関する知識

※スーパービジョンを行う上で、スーパーバイジーの現時点での力量の理解をしておくこと。 力量の理解とは、1〜6までのすべての要素に関するバイジーの @理解度 A実践力 B自分に 必要な新たな学びに対するモチベーションとその学びに対する実行する力をいう。

図B スーパービジョンの焦点決定に影響する要因
表2 信頼される関係を形成する力<援助関係形成に必要な原則>
表3(相談援助)面接における言語における言語反応バラエティー
図C 図A図Bをもとにした「対人援助職者の基盤とスーパービジョンの焦点の関係」

(4)ソーシャルワークの統合的アセスメントとは?−意義・重要性・枠組み
図D アセスメント面接から支援計画までのプロセス
 

援助的関係性の上で実施された統合的なアセスメント

  クライエントの生活の全体像が見える豊かな情報
  得られた情報が問題解決にどのように生かしていけるかを考える情報の統合・分析
  支援計画作成・実施

@重要性

クライエントのニーズ、強さより適切なクライエント像を提供するために、情報が収集、分析、統合される。

貧弱なアセスメントをもとにした介入は非効率的であり誤った方向性を示し、害さえももたらす。
問題状況、対象者のニード、問題を取り巻く環境を十分アセスメントせずに支援法を提示して成功したとしても、それはまぐれあたりにすぎない(アセスメントはソーシャルワークプロセスで最も重要な基本中の基本である)

Aアセスメント情報の出処―複数
(ア)

面接から得た情報(主に言語情報だが、面接で観察された非言語情報も含む)

(イ) 家族など関係者からの情報
(ウ) クライエントをこれまで援助してきた関係機関などの関係者からの情報
(エ) テスト結果(心理テスト、認知症の簡易検査、知能検査など)
(オ) (面接などでの観察とは異なる)クライエントの行動などの観察から得た情報
(カ) (クライエントとの面接で援助職者が感じた)援助職者としての「感覚」
質問 面接から得る情報量 ― 情報収集・分析・相談援助面接力の関連性<(DVD)視聴>

Bアセスメントの枠組み 表4 統合的アセスメントに必要な情報の枠組み
アセスメントすべき項目は下記のとおり
(1)

クライエントの問題意識

(2) 主訴(クライエントは何が問題だと述べているのか)
(3) 問題の具体的な特性
(4) クライエントの問題のとらえ方
(5) クライエントの特性
(6) クライエントの問題理解に必要な固有の情報
(7) クライエントの問題対処力とサポーターの存在
(8) 問題対処に関係する出来事・人・機関
(9) クライエントのニーズと問題との関連性・今後の問題対処に必要な資源

C統合的アセスメントの特徴
(ア)

複数の人間・社会理解のための理論の統合・応用

(イ) 継続性
(ウ) アセスメントと援助計画作成の同時性
(エ) アセスメント面接そのものが「治療的」

図E 適切なアセスメントと不適切で部分的なアセスメントの違い:アセスメント面接から得る情報量・質との関係

さらに学びを深めたい方のために―本講演の基礎となった教材紹介
(アンケートまとめ)
1.本日の研修会はいかがでしたか。(回答数187人)
とても参考になった 122人(65%) 参考になった 63人(34%)
あまり参考にならなかった 2人(1%)   参考にならなかった 0人(0%)
2.研修会についての意見等(抜粋)
スーパービジョンって何なのか?とても曖昧だったので、今回の渡部先生のお話は、とても分かりやすく、明日からの仕事にすぐに役立つ内容でした。日頃の相談援助に活かしていけそうです。また、ゆっくりしっかり渡部先生のお話を聴きたいです。
自分で実施している相談援助の見直しができました。周りの人へ伝えるバイザーの役をすることも多く、基本に戻ることができました。ありがとうございます。
今日をとても楽しみにしていました。(渡部律子先生の講演)思ったとおりの先生でした。ありがとうございました。
安心感が持ってもらえるように聞きやすい環境作りをしていきたい。分かりやすかった。
細かい方法論よりも何よりも本質を大切にしないといけないというポイントがよく分かりました。先生の熱意に感動しながら、自分の実践の1つ1つを思い返しながらお聞きしていました。
スーパービジョンに関しての研修会ということで、自分はまだ3年程度でかけ出しであまり関係ないと思って参加しましたが、スーパーバイザーから受ける、受け方がよく理解でき、良かったです。バイジーとして色々と学ばせていただき、経験を積んでいきたいです。
プランに対して、これが正解ではないということをいつも言われていますが、自分に自信がなく、大丈夫だろうかといつも問いかけていましたが、少し気持ちが楽になった気がします。日々の実践で頑張っていきたいと思います。
SVについて、図やDVDを用いて、楽しい口調で、分かり易く説明していただけました。
スーパービジョンの視点や方法について、理解することができた。事例や具体的な内容を提示されたことで、理解度が増したと思う。
統合的なアセスメント(情報の収集、分析、統合)の必要性、電話での相談(相手の表情がみえない時の)応対について考えることができました。
利用者との面接(特に新規の方)の仕方がよく分からず、いつも緊張しています。今日の研修は多くの気付きがありました。自分の仕事に1つでも活かしていけるようにしたいと思います。
DVDでとても分かり易く初回のインテークの大切さを教えていただきました。とっつきにくい言葉で分からないことだらけですが、安心感を与えることのできる専門職になれるよう努力したいです。
同僚に対してスーパービジョンが必要と思われる場面があったが、どう対応すべきか悩んでいたので、大変参考になった。また、自分自身を振り返ることもできた。
もう少し時間を取ってもらいたかった。とても良い話でまだまだ聴きたかった。
アセスメントをしっかりする力がいかに大切かを再認識しました。安心感を与えられるケアマネになれるよう自己研鑽していきたいと思います。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
日々、業務を行う中、ケアマネジメントの一連の流れを正しく行えているのか確認したくなります。アセスメント、プランの記載の仕方、モニタリングの記載の仕方など、研修の機会があれば嬉しいです。
アセスメント技術、プランへの表現、言葉の意味、根拠の示し方
総合的アセスメントをぜひ詳しく聞く機会があれば嬉しいです。
疾患に対しての気を付けておきたいポイント(多職種での着目をする点等)
もう少し詳しく今回の続きの話が聞きたいです。
面接の具体的手法や心理面についての研修を聴いてみたいです。
何度もスーパーバイザーを学びたいです。
コーチングの研修を受けてみたいです。
困難事例の検討会、対処法について(原因、要因)
対人援助技術について
インテーク面接のロールプレイ。自分のインテーク、面接力がどうか?弱い点はどこか知りたい。
法令根拠に基づくケアマネジメント・研修