(総会・研修会報告)
「令和元年度総会及び研修会」
日時 令和元年7月4日(木)13:30〜16:00
場所 広島県医師会館 1階 ホール
参加者 108名


1.総会
(1) 開会
(2) 落久保会長挨拶
(3) 平成30年度事業報告
(4) 議事
  第1号議案 平成30年度決算について
第2号議案 令和元年度事業計画(案)について
第3号議案 令和元年度予算(案)について
第4号議案 役員改選について
(5) 閉会

2.自主研修会
講演  「高齢者の権利擁護と自己決定の尊重について」
講師  弁護士法人坂下法律事務所
弁護士 坂下 宗生 先生

加齢に伴い認知症等による判断能力の低下は人が自分らしく生きていく事を難しくしている。
「高齢者の権利擁護と自己決定の尊重〜安心して自分らしく生きるために〜」と題して、弁護士坂下宗生先生にご講演頂いた。

以下はその要旨である。


本人(判断能力が低下した人)の為に不利な契約の未然防止や金銭管理を手伝う等、適切な契約取引を行う支援制度があると安心した日常生活が継続出来る。主に本人の権利を守る制度として、成年後見人制度と福祉サービス利用援助事業「かけはし」が挙げられる。
今回は成年後見人制度を中心に講義を進める。この制度には法廷後見制度(法律によって定められた制度)と任意後見制度(契約により自分で決められる制度)の二つがある。
法廷後見制度は本人の判断能力で決まる。具体的には認知症等により判断能力が十分でない場合に利用出来る。家庭裁判所が本人の為に後見人を選任するのだが、後見人は財産管理・身上監護の事務を行い、与えられた権限に応じて本人の権利行使を行う。原則として本人が死亡するまで継続する。
任意後見制度は本人に判断能力が十分ある時から本人と後見人との間で契約を取り交す事で出来る。本人の判断能力が将来「不十分」になった時、家庭裁判所が任意後見監督人を選任しその時から任意後見契約の効力が生じ、後見人は任意後見監督人の監査を受け契約に定められた財産管理・身上監護の事務を遂行する事を通じて本人を支援する。意思尊重義務等を後見人は負う。


安心して「自分らしく生きる」為には、自身の事を元気なうちに決めて伝達する事が大切。
例としてエンディングノートを自分で作成し、自分の中で大切な事、緊急連絡先、介護医療必要時の事、判断能力が不十分になった時の事、葬儀や墓の事等を書留める。他にも医療に特化したアドバンスド・ケア・プランニング。判断能力が不十分になった時の公証人作成の任意後見契約書。相続については遺言書がある。


高齢者の自己決定を支える仕組みとして成年後見制度利用促進法があり指針を策定。それを受けての「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」、認知症に関わりを持つ人が参考にするガイドラインで現場のスタンダートと位置づける。
認知症の人の能力を最大限活かし、日常生活・社会生活に関して自らの意思に基づいた生活が出来るように支援を行う。支援の仕方がガイドラインに照らし合わせた時に適切かどうか確認が必要で理解していれば後日法的責任を問われる事はない。意思決定支援の側面を本来やるべき支援の仕方をしたかどうか問われる。
意思決定の結論の正否は問題ではなくそこに至るプロセスが重要。その過程が正しい意思決定の手法かどうかが検証される。意思決定支援の中でもうひとつの核となる。

 
(アンケートまとめ)
1.本日の研修会はいかがでしたか。(回答数96人)
とても参考になった 72人(75%) 参考になった 21人(22%)
あまり参考にならなかった 0人(0%)   参考にならなかった 0人(0%)
無記入 3人(3%)    
2.研修会についての意見等(抜粋)
具体例をあげていただいたので、本人の能力を生かすことが理解できました。
特に任意後見制度の利用について、とても勉強になった。成年後見制度は困ってから利用するものと考えていたので、ケアマネ業務において取り入れていきたいと思った。
自己決定ができない利用者の支援の考え方がとても参考になった。
パワーポイントがないのが良かった。先生の情熱、熱意がすごく感じられて良かった。
認知症の人、高齢で自分の意思をなかなか表明できない人を支援していく上で、とても参考になるお話でした。「意思形成支援」について、特に意識していきたいと思います。また、「プロセスが重要」という言葉が響きました。「意思決定」のプロセスを大切にしていきたいと思います。
ACPの大切さを感じた。
自己決定の大切さを学びました。ゆれ動く意思に寄り添って支援をしていく事を常に考えて支援していきたいと思いました。
ケアマネの業務の中で迷うことも多いですが、何を大切にするべきか、少し分かりました。ありがとうございました。
意思決定支援者としての関わりについて、とても興味深かった。
話は楽しく、違った視点で講義をされたので、とても参考になりました。業務だけでなく、自分の生活の中でも役に立つ話がたくさんありました。ありがとうございました。
意思決定支援者としての関わりについて、とても興味深かった。
話は楽しく、違った視点で講義をされたので、とても参考になりました。業務だけでなく、自分の生活の中でも役に立つ話がたくさんありました。ありがとうございました。
弁護士として、後見人として関わったケースで胃ろうをするかどうかで迷った話が参考になりました。決めるべきこと、伝えるべきことを書いて残しておくことが大事だと思いました。話し方が分かりやすく、良かったです。
法定後見、任意後見についての説明が分かりやすかった。具体例での内容は聞きやすかった。
ケアマネをやりながら成年後見業務を行っています。自分の知識の再確認となりました。
成年後見制度の説明が非常に分かりやすく、改めて理解を深めることができました。いただいた資料は今後も活用させていただきます。
成年後見制度の研修は何度となく受けてきましたが、今日の坂下先生の講演が一番楽しかったですし、何よりよく分かりました。先生のお人柄も垣間見え、また、支援者としての心構えも、今一度確認した講演でした。
3.今後、参加してみたい研修のテーマやその他意見等(抜粋)
看取りにおけるケアマネの支援や立ち位置
ハラスメント防止研修会
セルフネグレクトについて
災害時の対応
クレーム対応
生活保護受給者で、介護サービス、居宅。施設、医療等の扶助の仕組みを詳しく知りたい。
最新のケアマネジメントについて